■100年前のフランス料理は!?
~歓迎の食卓~
今回は先日、珍しいものを入手しましたので、少しご紹介しようかと思います。
一般的に【食事】は、生きていくための栄養源の摂取に留まらず、家族や仲間と和やかに時間を共有したり、味を楽しんだりと多くの目的や意味が込められています。
また、来訪者を歓迎する目的でも食卓を共にする場合もあります。
しかし、時として文化・慣習・宗教・調理法等、多くの違いを持つ人々が一つのテーブルを囲み、食事を進めるのはとても難しいものです。
更に、国と国の間での違いはさらに大きく、時には関係を悪化させてしまう可能性さえ考えられます。
食事を共にしながらもスムーズに交渉を進めるため、外交における最前線とも言える各国の大使館・領事館等では自国の料理はもちろんですが外交儀礼、そしてプロトコールの定まったフランス料理でもてなしを行う場合が多々あります。
フランス料理は美食外交とも呼ばれる程、今や外交や交渉の場に必要不可欠なものになりました。
(フランス料理のプロトコール等のお話については、いつか改めてご紹介できればと思います。)

また、フランスの美食術に並び、和食が2013年にユネスコの【食の無形文化遺産】に登録され、海外でも認知度や人気や出てきたことは、様々な場面での今後の日本の食文化発展に非常に期待できるのではないでしょうか。
そんなフランス料理がご自宅で簡単に体験できる、ルヴェソンヴェールの宅配サービスはとてもお勧めです!! https://madoi-lsv.com/
~フランス料理での外交~
日本人が外交の為にフランス料理でもてなすことについては、明治時代の終わりから大正時代にかけて新設された宮内省大膳寮(現在の宮内庁管理部大膳課)が一つのポイントになるのではと思います。
それよりも前に西洋料理でもてなされる場合はあったようですが、有名ホテルのフランス人シェフの監修や指導を受けながら提供していたものでした。
このあたりのお話は、初代厨司長の秋山徳蔵氏がテーマの【天皇の料理番】として以前テレビドラマにもなりましたし、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
( 秋山徳蔵著『味』 中公文庫 2015年1月25日刊より)
今回ご紹介するのは、大正時代が終わった直後、昭和三年に実際に大使館で提供されたフランス料理のメニューカードです。

ロンドンの有名なグロブナー・スクエアの記載がありますので、当時の駐英日本大使館のメニューだと思われます、写真ではわかりにくいのですが、カードの周りは金縁で装飾されており、皇室の菊花紋が大きくデザインされている事から、当時の時代背景も想像されます。
現在の駐英大使館の場所は、もう少し南側に移転していますので、住所的には現在のロンドン・マリオットホテル・グロブナースクエアの辺りだと思いますが、約100年前の住所表記ですので現在と異なる場合もあるかと思います。
(確認のためBritish History Online並びに、外務省の日本外交文書デジタルアーカイブを参考にさせていただきました。詳しい方がいらっしゃりましたら、ぜひご教示頂けますと幸いです!)

さて、簡単にメニューの内容にも触れておきましょう。
スモークサーモンに始まり、かめ、舌平目、ウズラ、仔羊、アスパラガス等、古典的なメニュー内容と構成の中に季節感が盛り込まれ、品数も多いことから重要な宴席でのメニューだったのではないでしょうか。
また、現在のように、パソコンで簡単に編集してメニューを印刷できる時代ではないですし、しっかりと印刷された間違いのないカードを毎回宴席ごとに用意してゲストを迎える大変さは、当時の外交に携わった方々のご苦労が偲ばれます。
個人的には、公式な晩餐等のメニュー表記は一般のレストランのメニューよりもシンプルな表記だと思います。
現在のレストランでは、食材名や仕立て方以外にも調理法・生産地・食材のブランド名等多くの記載をする場合が多くなりました。
外交の場では、どんなバックボーンを持った方が同席するか、完全に把握することは難しく、時には必要のない誤解を与える場合も想定されるのではないでしょうか。
地名や人名などが場合によっては讃辞や崇拝ととらえられる可能性も考えられます。
メニューカードは、食事が始まる前に席に用意されている場合がほとんどですが、単なる料理の紹介のみならず、そこには既に多くのもてなしの心と思いが込められているように思います。
そんなことを考えながらこのメニューカードを眺めておりました。
メニューカードは、レストランでのイベントや、限定メニューなどの際に個々に用意されることがありますし、結婚式などでも手にする機会があります。
この小さなカードには、主催者(レストランでは料理人、サービスマン等)からのメッセージと想いが込められたものでもあります、可能な場合にはぜひお持ち帰りになられて、会食での思い出と共にご覧いただければと思います。
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<ブログ投稿>
高橋 健太 KENTA TAKAHASHI
2003年 辻調理師専門学校フランス校 卒業後
フランス・ローアンヌ トロワグロ勤務
2004年 帰国後 アークヒルズクラブ 入社
その後、都内のレストランで勤務
2010年 ルヴェソンヴェール東京入社
日本ソムリエ協会 認定ソムリエ
メートル・ド・セルヴィスの会 会員
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